久野原僚、財産持ちの美術収集家。
40年近いキャリアを誇る「泥棒」としては、彼は<黒猫>のニックネームで知られていた。
その久野原が、忍び込み盗んだ宝石の中に、狙いのダイヤ「月のしずく」はなかった。
40年近いキャリアを誇る「泥棒」としては、彼は<黒猫>のニックネームで知られていた。
その久野原が、忍び込み盗んだ宝石の中に、狙いのダイヤ「月のしずく」はなかった。
怪盗の有給休暇
久野原僚、財産持ちの美術収集家。本業-すでに40年近いキャリアを誇る「泥棒」としては、彼は<黒猫>のニックネームで知られていた。
ある晩、屋敷に忍び込み金庫を開けた瞬間、犬が吠え出した。
他の泥棒と同時に忍び込んだのだ。
もう一人の泥棒が逃げていく。
久野原は金庫の宝石をすべて盗み、カーテンのかげに身を寄せた。
「何だろう?」
「何かあったんだ」
「行ってみる! 君は部屋へ戻って」
「どうしたの?」
「犬が吠えてるわ」
「分からない。-ともかく君は自分の部屋に」
使用人の若い男女が、密会しているのに出くわしたのだった。
そして狙いのダイヤ、「月のしずく」は久野原の盗んだ宝石の中にはなかった。
後に親しい刑事から聞いたところによると、「月のしずく」は盗まれており、久野原の出くわした男、江田は自殺したのだと言う。
江田だけが遅くやって来たことで、使用人の皆に、共犯者ではないかと疑われたのだ。
そして、<僕じゃありません>と遺書を残した。
久野原は自殺の方法や、女が一緒だったことを、そこまで黙っていたことに不審をいだいた。
後味の悪さを感じた久野原は、深入りしたくなる心を抑えるため。
そして、事件の話が耳に入るのを避けて、ヨーロッパ旅行に出かけた。
ライン川が、その長い流れの中で、ただ1ヶ所、滝になって落ちている、ここはシャフハウゼンという所。
「冷たい!」
「足下に気をつけて!」
「写真、写真」
「交替で撮ろう!」
「すみません! シャッター切っていただけます?」
「いいとも」
「-じゃ。その滝のしぶきをバックに?」
「お願いします!」
何と、久野原が写真を撮ってやった3人連れの大学生の1人が、江田の恋人の美鈴であった。
3人は、同じホテルに滞在しているという。
ホテルのロビーで、良くない噂の宝石商を見かけ、部屋に戻った久野原。
「さっきの宝石商と、ダイヤ<月のしずく>を盗まれた大金持ちが同じホテル。しかも、盗んだ疑いを持たれて自殺した若者の恋人らしい娘が、女子大生3人で同じホテル…。面白いじゃないか」
この後、女子大生に誘われショッピングに出かけた久野原であったが…。
さて、このミステリーの謎は解けますでしょうか? >>本をみる